カツラギ サトコ   KATSURAGI Satoko
  桂木 聡子
   所属   兵庫医科大学  薬学部 医療薬学科
   職種   教授
発表年月日 2023/03/04
発表テーマ がん患者におけるパクリタキセル誘発性末梢神経障害に及ぼす血液凝固活性低下と抗凝固薬投与の影響
会議名 第4回近畿大学大学院臨床薬学シンポジウム
学会区分 研究会・シンポジウム等
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 共同
国名 日本
開催地名 大阪
開催期間 2023/03/04~2023/03/04
発表者・共同発表者 宮本朋佳、桂木聡子、木村健、川畑篤史
概要 我々は、抗がん剤パクリタキセル(PCT)の投与により高頻度で発症する化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に、細胞外放出された核内蛋白high mobility group box 1 (HMGB1)が関与すること、またDIC治療薬であるthrombomodulin (TM) alfa (TMα)がthrombin依存性にHMGB1を不活性化することでCIPN発症を阻止することを明らかにしている。一方、抗凝固薬は、TMαのthrombin依存性抗CIPN効果を消失させるほか、恐らく内因性TM/thrombin系によるHMGB1分解を抑制することでCIPNを増悪させることも報告した。そこで、これらの基礎研究知見をリアルワールドデータの分析によって検証するため、PCT投与がん患者における血液凝固活性および直接経口抗凝固薬 (DOAC) 投与とCIPN発症・増悪の関係を後ろ向きに解析した。【方法】兵庫医科大学病院でPCTが投与された338名のがん患者の凝固検査値とCIPN重症度の関係を解析した。また、日本の医薬品副作用データベース(JADER)および米国の有害事象報告システム(FAERS)におけるPCT関連報告(JADERは9398件、FAERSは53828件)から、ICH国際医薬用語「末梢性ニューロパチー(SMQ code:20000034)」を用いてCIPNを抽出し、DOAC投与との関係を解析した。【結果】凝固検査値のうちprothrombin timeまたはactivated partial thromboplastin timeが長い患者では、PCTによるCIPNの重症度が有意に高かった。またJADERとFAERSの解析ではDOAC投与と、PCTに関連する末梢性ニューロパチーとの間に有意な相関が認められた。【考察】凝固活性(thrombin産生能)が低い患者あるいは抗凝固薬を投与している患者ではCIPNが増悪しやすいことが判明し、我々が提唱する内因性TM/thrombin系の抗CIPN的役割を支持する臨床知見が得られた。